無気力な人間達 [1]








 放課後、学校の屋上に座り僕たちは話をしていました。


「僕たちって、無気力な世代なんだって」彼は言った。

「時代がそう言ってるんじゃないの?」僕は言った。

「時代って何?」と彼。

「区切られてしまった、長い期間」と僕。

「今は、無気力って時代なんだ」と彼と僕。



僕:「夢ってある?」

彼:「特にないなー。夢、ある?」

僕:「・・・特に」

彼:「無気力だね」

僕:「まぁ、とりあえず生きているけどね」

 屋上からみえることの出来る道路がありました。
 道路には、大勢の人が歩いています。
 何かに向って。
 漠然とされた、保証のない未来に向って歩いています。
 

彼:「皆、何を考えて生きているんだろ」

僕:「そんなの一概に言えるわけないよ」

「…、一ついえることは、欲じゃないかな」

彼:「欲って?」

僕:「何でも当てはまるよ。食欲、睡眠欲、性欲とか。漠然に生きたいとか、死にたいとか、憎しみさえも欲になるよ」

彼:「欲のない人間はいないかな?」

 このとき、涼しい風が彼と僕の身体に、優しく当たりました。

僕:「いたとしたら、そいつは人間じゃないね」

彼:「無気力な世代には、欲はないのかな?」

僕:「無気力っていう、欲だと思うけど」

彼:「君は、欲のせいにして、物事から逃げてるね」

僕:「実際、そうだから仕方ない」

彼:「妥協している。諦めている。思考に強要はしないけどね。君はそう思うことによって、自分を特別な人間だと思い込んでいる」

  このとき、優しい風が吹きましたが、僕の心は沁みるような痛感を覚えました。

僕:「どう、生きればいいと思う?」

彼:「無気力な人間にする質問では、ないね。道路を必死で歩いている人間にでも、聞いてみなよ」

 世界はゆっくり動いています。
 保証のない世界は、僕たちを不安にさせます。
 不安は重く、すり減り無気力と変化します。

僕:「どう生きればいいのですか?」

 通行人は、異物を見るような目で走りさってしまいました。

 ふと、学校の屋上を見上げました。

 彼が一人で、僕のほうをみているのがわかりました。



 優しい風が、まだ吹いていました。


続く…↓

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