僕は今、暗闇の中を歩いている。暗闇は、やっぱり黒くて見えるものが少ない。
僕の存在は小学校のとき終わったんだ。あのときの、錯覚は現実のものになった。自分って何なんだろう、ただそれだけの錯覚だったんだ。
小学校。
あのときから、僕はおかしかった。特に転校してからさらにおかしくなった。確かあのとき、ユリという人間がいてひどい事したな。毎日、ユリはカバンにアヒルの人形をつけていて、僕が壊したんだ。口の部分をカッターで切って、綿を出したな。ユリはひどく泣いていたな。
『どうしてそんなことするの!』
『おばあちゃんに買ってもらったのに!』
そんなセリフ言っていたっけ。もうよく覚えていないや。…あれ?
どうしてそんなことしたんだっけ。ユリが憎くなったからだよね。
憎くなった理由。
思い出した。僕の秘密を知ったからだ。だから追い込んだんだった。
ちょっと追い込んでみたら、不登校児になっちゃうんだもん。笑ったなー。
高校。
高校になったら僕はひどくおかしくなったな。彼はまだ僕を覚えているのかな。
くそ…。僕をめちゃくちゃにした、彼。
名前は『ミナミ』だ。あいつは演技をして、世間を騙していた。もちろん僕も含めてだけど。絶対、ミナミを許さない。
僕は、そのときからミナミを殺すって決めたんだ。
殺すって言っても、僕は自分からは手を下さない。自殺させてやる。そのためには、ミナミの秘密を知って、間接的に追い込む。秘密…、僕はもう知っているじゃないか。
彼は今、ユリと交流を持っている。ユリと僕が交流を持っていたことをミナミは知らない。
そんな情報は、嫌でも耳に入ってくる。
なぜなら、僕の友達が彼の彼女だから…。
彼は僕のように、精神がゆがんだ人に興味を持っている。ユリもその対象の一人。
性同一性障害。僕の病気。
僕は女なんだけれど、男なんだ。
彼はそんな僕を、女にしてしまった。…はっ、はっ。考えただけで息が詰まる。薬を飲まなくちゃ。スルピルト。
僕から言わせて貰えば、彼もだいぶ精神を病んでいる。そして、それが世間に知れることを恐れている。それを利用するんだ。
続く…