<全てへ>
森に、革命が起きた。
それは、自然に。偶然に。必然に。
森は、鼓動を起こした。
それは、鎮魂歌のようだった。
動き出した。それだけだ。
「この青い森に、終わりってあるのかな?」
シオンは犬のような泣きそうな目で、ハルを見つめている。「世界の終わりを、信じるの?シオン」
ハルは、静かに微笑みを浮かべ、シオンを撫でている。「だって、さっき森がさ・・・」
「そうね。地震みたく揺れたね」
「ハルは、怖くないの?」
「怖くない」
どうして怖くないのだろうと、シオンは思った。ただ、不思議だった。
怖いものは、何も無いのかなと、思っていた。
「ねぇ、ハル」
シオンは聞いた。「ハルの怖いものって、何?」
ハルはシオンの頭を、犬のように撫でて、言った。「空気」
どうして・・?「空気が無かったら、私達の声すら聞けないでしょ?音は空気がないと生きられないのです」
「そうなんだ・・」
「私はね、シオン。君の音が聞きたいの。君の声が、聴きたいの。いつまでも・・。だから、空気は天敵なんだよ」
「僕は、音なんだね」
シオンはにっこり笑う。「じゃあ、ハルは・・、何・・?」
ハルは突発的な質問に、戸惑っているようだった。ハルの目に、力が入った。
「私は、宇宙」
「宇宙?」
「そう。空気を吸い取ってあげるの。そしたら、そこで星を生み出して、青い森でも、何でも作れちゃうでしょ」
「そうだね」
ハルは、シオンを包む。シオンは、ハルを包む。
青い森は、二人を包む。
静寂は、全てを包み、安全ピンで小さな穴を空けた。
それが、ハルの行為なのか、シオンの行為なのか、青い森の行為なのか、または誰かからの行為なのか、分からない。
青い森に、暗黒の光が差し込んだ瞬間だった。
青い森は一瞬にして、暗黒の森に、なった。
それは、まるで、宇宙のようだった。