青の物語 [6]






<青い森>

 私は、眼を、覚ました。

 少年と、少女が、訪れる時に。
 最近では、毎日来る。
 隈がある、少年と、少女。
 私は、そんな少年と少女を、包みたく思う。
 寧ろ勝手に、純粋なる勝手に、包みこむ。

 弱い目をした、少年と少女。
 生きているのか、生きようとしているのか、死を求めているのか。
 見当が付かない。
 それを知る必要が、あった。
 なぜなら、二人は招からざる、お客なのか。
 または、そうでないのか。

 私は身体を、さらりと揺らす。

「ザワッ」と、森全体が動く。

 少年と、少女は、可愛い。
 ビクついた。
 首を左右に動かす。どうやら、身に危険があるのか、そうではないのか、判断しているらしい。
 死を求めている人間は、些細なことでは、動じない。
 よって、生きる意志はあると、考えられる。

 そして、招くお客だ。ようこそ。

「今の、何だろう?」

 シオンという少年がいう。

「気味、悪いね」

 ハルという少女がいう。

 私は、無性に、虐めたくなる。
 怯えさせたくなる。どうやら、生きる意志はある。だからこそ、試す価値がある。意味もある。

 ささやかに身体を揺らして、葉をさらさらと落してみせる。

「風は吹いていないのに、森が揺れている」

 シオンは葉を掴み、呟く。

「青い森だもの。確かに、普通ではないよね」

 ハルは辺りを、見回す。
 そう。
 私を、感じて。
 そして、見つめて。
 招いてあげる。


 あなた達は、まだこの森の魅力に気が付いて、いないから。

 私は、青い薔薇さえ、生えさすことができるの。

 樹を捻じ曲げることさえ、容易なのよ。

 あなた達を、動かすことも、簡単なの。


 迷える、ハル、シオン。
 何処に行きたい?
 私が連れて行ってあげる・・・。



続く





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